【映画】 悪人
特報では、
ある殺人事件があり、その犯人が人を愛してしまい…
というような。
確かに完結に1行で表現しろと言われればそうなのですが、
映画を見た後のイメージは少し違いました。
悪人の公式サイト(http://publications.asahi.com/akunin/)
にも出てきましたが、
「悪人とはいったい誰なのか」
これを強く思いました。
人を殺すことは確かに悪人だ。
しかしだからといって、それ以外の人は悪人ではないのか。
妻夫木聡演じる祐一以外の人物にスポットライトを当てることで、
観ていて次第に誰が一番の悪人なのかがわからなくなってきます。
祐一にスポットが当たっている時、
光代(深津絵里)や房枝(樹木希林)は祐一の優しさに言及します。
また、佳乃(満島ひかり)が増尾(岡田将生)に車から追い出された直後も、
不器用ながらも彼の優しさが垣間見えます。
これらの優しさが最後の祐一の”悪人”っぷりを引き出したように感じます。
警察が目の前に迫ったとき、
「俺はあんたの思っているような人間じゃない」
そう言うと光代の首を絞めにかかります。
これが持つ真の意図は、
もうこの先一緒にいることができないことがわかっている。
ならば、こんな人と別れてよかったと思わせないといけない。
というような”優しさ”から出た行動ではないでしょうか。
光代もそれがわかってか、
「そうですよね、彼は人を殺した悪人なんですよね」
と呟きます。
事実が事実だけに、悪人であることは間違いない。
しかしそれだけではない。
その切なさがとてもストレートに出ている物語だと思いました。
最後に、少し話が逸れますが、
柄本明演じる石橋佳男(佳乃の父)がこんなことを言っていました。
「今の世の中、大切な人がおらん人間が多すぎる。
自分には失うものがないちゅうて、そいで強くなった気になっとう。
だけんやろ、自分が余裕のある人間て思い腐って、
失ったり欲しがったりする人を馬鹿にした目で眺めとう。
そうじゃないとよ。
そいじゃ、人間は駄目とよ。」
この言葉が深く刺さりました。
大切な人がいないと人生始まらんな、と。